2023年8月4日金曜日

心販研コラム 心理のこまど

「心販研コラム 心理のこまど」は、出版営業のちょっとした呟きから、本づくり、本の営業の現場の空気を味わっていただきたくはじめたコーナーです。

今月の担当は創元社さまです。

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20代半ば過ぎに現在の会社で勤めることになるまでは、「心理学」と言われてもあまり明確なイメージはありませんでした。入社当時に刊行された『プロカウンセラーの聞く技術』(東山紘久著/2000年刊)は心理学書の棚ではなく、ビジネス書として大きく展開することで、ほどなくベストセラーになった思い出の書籍です。

 当時の営業マン(死語?)は、クライアントに対してしっかりと自社商品の良さを頭に叩き込み、軽妙なトークでプレゼンすることに重きが置かれていました。そんな時代にカウンセラーという目線から「聞く」という要素を取り入れた本書は「聞き上手は話さない」という章から始まり、これまでのビジネスシーンの常識を変えるきっかけになったのかもしれません。のちに文藝春秋から『聞く力』(阿川佐和子著/2012年刊)が超ベストセラーになり、約15年間は「聞く」がトレンドになっていたように思います。

 

その後弊社では、『聞く技術』の続編ともいうべき『プロカウンセラーの共感の技術』(杉原保史著/2015年刊)を刊行しましたが、当時はまだ「共感」という言葉じたいがそこまで一般化しておらず、期待していたほどの売上には至りませんでした。カウンセリングの世界では当然備えておくべきスキルなのですが、一般の方には少々難易度が高かったのかもしれません。

 

そんななか、これまでとはまた違った大きなムーヴメントが起こります。すばる舎『人は話し方が9割』(永松茂久著/2019年刊)のベストセラー化です。心の中で〝えー、結局また「話し方」に戻るんかいっ〟と関西弁丸出しで思わずツッコミました。結局のところ流行は繰り返されるものなのですね。

 

 


最後に弊社ダントツのロングセラー『人を動かす』(D・カーネギー著/初版1958年刊)のお話を少しだけ。本書は自己啓発の元祖ともいわれるビジネス書の古典ですが、改めて目次を眺めてみますと、「聞き手にまわる」(聞く)、「同情を寄せる」(共感)、「自分の過ちを話す」(話す)とこれまでご紹介したすべての要素がこの1冊に含まれているではありませんか!

 

絶対的な法則は、時代に流されることなく、今も変わらず引き継がれているということでしょうか。同書は今年9月、42年ぶりの改訂を控えています。新刊書も魅力がありますが、ロングセラー書の良さを思い出すきっかけになればと思い、弊社刊行物3点をご紹介させていただきました。駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

(河本)

 

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