心販研コラム 心理のこまど
先月から「心販研コラム 心理のこまど」を連載しております。
特約店の書店員さんに親しみを持ってもらいたく、心販研12社が持ち回りでコラムを担当いたします。
出版営業のちょっとした呟きから、本づくりの現場の空気を味わっていただければ幸いです。
今月の担当は誠信書房様です。
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○新訳の文庫も出たけどこっちも忘れないでいてほしい 誠信書房の大津留と申します。数年前まで福岡の本屋で人文担当をしておりました。縁あってご厄介になっている今の職場が出している本についての当時の印象というと、まず『影響力の武器』シリーズ。東畑開人先生の著作。あと人文担当に配置換えになったばかりの頃に<ライ・トゥ・ミー>(2009~2011年放送)という海外ドラマシ リーズが放送され、主人公のモデルとされるポール・エクマンの著作『表情分析入門』が売れていて、こんな専門書の売れ方もあるのかと鮮明に覚えていたりもします (エクマンの著作で一番売れていたのは河出書房新社の『顔は口ほどに嘘をつく』でしたが)。 ドラマに登場、といえばNetflix制作のドラマシリーズ<マインドハンター>(2017年配信)の劇中、多くの社会学者の名や研究とともに、アーヴィング・ゴフマンの著作で弊社刊行の書籍『行為と演技』(原著1959年刊行)も、とあるシーンで演出に一役買うような言及をされています。舞台は1970年代後半アメリカ、主人公たちはFBIとその周辺、社会学やゴフマンが引き合いに出されるのはむべなるかなといったところです。そのことを知ったのは入社後で、商品知識のためとまずはドラマをひと通り観てから『行為と演技』をちまちま読み進めていました。1974年刊行で弊社でも古株の書籍、難しそうに見えますが、読めないことはなかったです。
そんな中、今年4月に『行為と演技(副題:日常生活における自己呈示)』の新訳、『日常生活における自己呈示』がちくま学芸文庫より刊行されました。現在までの研究成果に合わせた待望の新訳と謳われています。折角なので購入し、こちらも少しずつ読み進めています。両方を読んでようやく気づいたのですが、ゴフマンの文章、相当にクセが強い。私はそのレトリックに強く引っ張られ、ある種の小説のように読んでしまっていました。特に人々の相互行為を演劇に寄せて語る側面は『行為と演技』の方により濃く(もしかしたら古い文体のせいなだけかも……)、そちらの方がどうも私にはしっくりきます。 というわけで遠回りをしましたが待望の新訳!決定版!が出てもまだ読みがいのある書籍のはず、弊社の『行為と演技』ももうしばらく棚に並べていただけるとありがたいです(ゴフマンの著作は他に3点、『出会い』『アサイラム』『集まりの構造』とありますのでそちらもぜひ)。以上、及び腰ながらも伝えたかった件でした。
(誠信書房 大津留)
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