2023年5月26日金曜日

心販研コラム 心理のこまど

 

 

○そうはいっても、たくさん売りたい

 

 弊社で3月に刊行した、麻生武著『6歳と3歳のおまけシール騒動』が、多くの新聞・雑誌に取り上げられて少々狼狽している。というのも、こちらの書籍の価格が四六判で定価3960円と一般には高額なため、じつに申し訳ない気持ちにかられるからである。

  本の業界も物価高の波から逃れられず、昨年末からこの間、紙の価格だけで、15%ほどの値上げが3度ほどあった。つまり1.5倍になった計算。販売価格にいくらか反映せざるを得ないのは分かるが、並製で4000円……。刷部数を1500部にしておけば(実際は1200部)もっと安くつくれて、より多くの人が手にとりやすかったのでは、と後悔はつきない。

 本書、もっとも悔しかったのは、口絵としてビックリマンチョコの写真を8頁掲載するようすすめていたのだが、製造元から許可が下りなかった。口絵の写真があればさらに資料的な価値も高まっただろうに。自社の社史の一部にもなろうかという企画なのに、とじつに口惜しい。

 まあ八つ当たりはここまでにして、企画の力とその反響を見損ねていた自分たちがまず悪い。本書をしっかり売らないと著者の麻生先生に顔向けができない。いただいた書評も評者の先生方もちょうど「おまけシール」世代の方なのか、じつに思い入れのこもった書評をいただいている。重版にむけてさらに宣伝に努める所存です。

 さて5月発売予定の新刊、大内雅登・山本登志哉・渡辺忠温 編著『自閉症を語りなおす』は販売価格を考えて、初版2000部とした。著者の大内雅登さんはこどもサポート教室の児童指導員の方で、市井の方である。氏のユニークなところは自身、自閉スペクトラム当事者でありながらその視点から子どもたちのケア・サポートをしている。その実践と体験をやまだようこ氏や高田明氏、綾屋紗月氏、高木光太郎氏、浜田寿美男氏らが研究者の視点から検討・解説・批判していくという構成になっている。この大内氏の語り口の明るさとユーモラスなところも読みどころの一つだ。
 


 2000部というじつにかわいらしいチャレンジだが弊社としては難事業。ユニークなものを伝えていくことに、営業の楽しみはあるわけで、一人でも多くの人に伝わればうれしい。たくさん売れればもっとうれしい。

                                 (新曜社 中山)
 

0 件のコメント: