2024年3月13日水曜日

連載 心販研コラム「心理のこまど」

 連載「心販研コラム 心理のこまど」
心販研12社による持ち回りコラムです。
出版営業のちょっとした呟きから、本づくりの現場の空気を味わっていただければ幸
いです。
今月の担当は、今月から新規入会となった遠見書房様です。

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○遠見書房

皆様,お初にお目にかかります。
遠見書房と申します。
今年より心理学書販売研究会の仲間に加えていただくことになりました。今後ともどうかよろしくお願いします。

遠見書房は,カウンセリングや心理療法の分野,学問的に言えば,臨床心理学を中心に,その学際領域である精神医学や基礎心理学,社会学,福祉学といった本づくりをしています。
「心販研」の中では,2008年に創業した圧倒的に歴史の浅い会社です。当初は「ほぼ一人出版社」などと称していましたが,気がつけばアルバイトを入れると10人くらいいる会社になってしまっております。人間関係に疲れてこじんまりとした会社をつくったはずなのに,どうしてこうなってしまったのでしょうか。


会社の名前の読みは,「遠くを見る」『とおみしょぼう』です。何となく志があるようなないような。ご挨拶がてら,そんな社名にまつわるお話をしたいと思います。当然,名前をつけるにあたっていろいろと悩みましたが,まずは背表紙の下のほうに横書きで入るように3~5文字くらいにしようと考えました。作家の三島由紀夫は,駅名からつけたそうです。東海道線を東京駅から西に向かい,「三島」でピンときたのだとか。大磯由紀夫とか函南由紀夫になっていた可能性もあったのでしょうか。


似たような感じで,地名や川,山の名前のような「動かない名前」がよいと考えました。登山が好きなので,山名にしようと昭文社「エリアマップ」(登山地図)を10枚くらい広げて,ピンときたのが「遠見」でした。北アルプスにある百名山 五竜岳に「遠見尾根」という尾根があります。そこから拝借をしたのが,遠見です。

というのが簡単な解説ですが,もうちょっと困難があります。まず社名というのものは,近所に同業で似たような名前の会社があったりすると認められないこともあるんですね。そもそも出版社で名前がかぶってしまうのは書店員の皆様にとっても読者の方にとっても困ってしまいます。漢字では違っていても,読みが同じというのもあまりよろしくない。漢字で読み方がわかりにくい,なんていうのもよくありません。できればパソコンやスマホで漢字変換をしたときに面倒がないものの方がいい。

本にはISBNコードというのがついてますが,これの取得者の一覧が検索できるサイトがあって,そこに思いついた名前を入れていきました。ISBNは,まったくの個人の方も登録していますので,日本にどのくらいの出版者があるのかはわかりませんが,まあ,企業として存続しているところは数千はある。当然,知名度が高かったり,字面がいいな,と思った山名はすでに使われていたりする。昔の出版社であればそれで終わりでしたが,現代を生きる出版社にはSEO対策の必要性があります。SEOとは,Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)のことです。ま,要するに,「心理学 本」なんて検索をしたときに,上位にくるように自社のネット情報を操作すること。これがSEOです。


出版社名で検索をしてもらったときに他の情報が上位に表示されるのを避けたい。今の読者の方々は本を買う前にAmazonで検索をする人も多くおられるので,Amazon上でも検索上位にくるユニーク(類のない)な社名でありたい。他の商品名とかぶったりするのも困ります。そのためにウェブサイトにいろいろと細工をするのがSEO対策なのですが,金もかかるし,リスクもある。細工しすぎるとグーグル検索から排除されたりもします。で,一番楽なSEO対策こそオリジナリティのある名前をつけることだったりします。


たとえば,会社名に「心理出版」なんていう名前をつけたとしたら,「心理」「出版」であまたの検索結果が出てきてしまうことになり,きっとウェブの森に埋もれてしまいます。専門出版社の志としてはわかりやすいネーミングですが,検索しても全然出てこないというのではスタートアップの企業としては悪手です。お笑いコンビ「ラランド」のお二人がラジオか何かで,自分たちは何も考えずに名前をつけたので,エゴサーチが全然できない,ということを嘆いていましたが,確かにネット社会においてはあまりよくないことかもしれません。売れてしまえばいいんでしょうけれど。

ということで,思いついた会社名をISBNのサイトで検索をし,似たような名前がなければ次はグーグルで検索をする……ということを繰り返した結果,「遠見書房」という名前になったというお話でございます。皆様も会社名や商品名をつけるときなどにご参考いただければ幸いです。


創業数年後,とある女性が「遠見○○」という名前で大人向きの映像作品でデビューされ,大変人気となり,Amazonで「遠見」を検索すると,うちの本よりも上位にきてしまっていた……という困ったお話や,いまだ五竜岳にも遠見尾根にも行っていないというお話についてはまたの機会に。

今後ともどうかよろしくお願いします。(遠見書房・山内俊介)

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